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東京地方裁判所 昭和46年(ワ)7634号 判決

原告

上林文登

被告

山梨県

ほか三名

主文

壱 被告日本梱包運輸倉庫株式会社、同早川一男は各自原告に対し百弐拾八万八千七百円およびこれに対する昭和四拾六年拾壱月拾日から支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

弐 原告の被告日本梱包運輸倉庫株式会社、同早川一男に対するその余の請求、被告日本道路公団、同山梨県に対する請求をいずれも棄却する。

参 訴訟費用について原告と被告日本梱包運輸倉庫株式会社、同早川一男との間では原告に生じた費用の拾分の九は右被告らの負担、その余は各自の負担、原告と被告日本道路公団、同山梨県との間では原告の負担とする。

四 この判決は主文第壱項に限り仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  原告

被告らは各自原告に対し一、四一四、八一七円およびこれに対する昭和四六年一一月一〇日から支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は被告らの負担とする。

との判決ならびに仮執行の宣言。

二  被告ら

原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。

との判決。

第二当事者の主張

一  原告の請求原因および主張

(一)  事故の発生

原告は次の交通事故(以下本件事故という。)によつて受傷した。

1 発生日時 昭和四五年九月一三日午後四時頃

2 発生場所 山梨県大月市笹子町黒野田笹子トンネル内大月市側入口から甲府市寄り約六〇〇メートル地点路上

3 加害車 車両運搬用大型貨物自動車(埼玉一に八二六七号。以下被告車という。)運転者 被告早川一男(以下被告早川という。)

4 被害車 サイクリング用足踏自転車(以下原告車という。)運転者 原告

5 態様 原告は、右笹子トンネル内道路の進行方向左端を大月から甲府方面に向け、原告車で進行中、後方から進行してきた被告車と接触したか、被告車の通過時の風圧、騒音等によつてかのいずれかを原因としてその場に転倒した。

6 傷害の程度および治療経過 原告は、右事故により骨盤骨折、後腹膜血腫、右下肢擦過傷、左仙腸関節脱臼、恥骨結合離別による筋力低下、腰椎捻転等の傷害を受け、昭和四五年九月一三日から同年一二月八日までの間勝沼町立診療所および山梨療養所に入院し、その後しばらく自宅静養を続け、同四六年二月三日から同年三月二六日までの間奥鹿教湯温泉病院に入院して各治療を受け、その後も通院治療を続けたが、左仙腸関節脱臼、恥骨結合離開等の後遺障害を残している。

(二)  責任原因

本件事故は次のとおり被告らの共同不法行為によつて発生したものであるから、被告らは各自後記原告の蒙つた損害を賠償する義務がある。

1 被告早川

被告早川は民法七〇九条による義務。すなわち、前記笹子トンネル内の道路の幅員は六・五メートル、甲府方向車線幅員は三・二メートル、道路端に幅約二五センチメートル、深さ約二ないし五センチメートルの側溝があり、トンネル内は薄暗い状態であつた。被告車は車幅二・四九メートルの大型貨物自動車で、本件事故当時は甲府方面からの対向車が間断なく進行してきていた。被告早川は、右のような状況のもとで甲府方向に向け被告車を運転・進行していたところ、同方向道路左端を自転車で先行している原告を追い越すことは、原告と接触し、転倒させる危険があつたか、少なくとも、被告車が原告を追い越すこと自体が自動車の風圧、騒音等によつて原告に恐怖感を与え、原告を道路左端際に寄らせ、道路端側溝に入ることを余儀なくさせて、原告を転倒させる危険があつたのであるから、被告早川としてはトンネル内で原告を追い越すことを断念するか、あるいは追い越すとしても、原告がトンネル内の安全地帯に入つた時に追い越すかして、原告をトンネル内道路壁際に押しつけないように原告とある程度距離を置き、最徐行して追い越すなどの安全運転義務があつたのに、右義務に反し、漫然毎時約四五キロメートルの速度で原告を追い越した過失によつて原告を路上に転倒させ本件事故を発生させたものである。

2 被告日本梱包運輸倉庫株式会社(以下被告会社という。)

被告会社は、被告車を被告早川に運転させて車両を運送し、被告車を自己のため運行の用に供していたから自動車損害賠償保障法三条による義務。

3 被告日本道路公団(以下被告公団という。)

被告公団は国家賠償法二条による義務。すなわち被告公団は本件事故当時笹子トンネル内道路を管理していたところ、かゝる道路管理者は、道路の瑕疵による交通の危険を防止するため、道路の維持・修繕およびその他の管理をする責務を有し(道路法四二条一項、なお日本道路公団法一九条)、これにもとづいて道路法四六条一項は道路管理者に「道路の破損、欠壊」の場合、道路の通行禁止・制限をする権限を付与している。したがつて、右の「道路の破損、欠壊」は道路の瑕疵について例示したにすぎず、「その他の事由」は単に道路の破損、欠壊と類似するものだけをいうのではなく、道路の瑕疵により交通が危険である場合を一般的に含むと解するのが相当である。本件において、トンネル内では道路幅員は狭く、自動車とともに自転車の通行を認めることが極めて危険であつたが、これはトンネル道路の構造的欠陥にもとづくものであるから、道路の瑕疵による交通の危険が存する場合に該当するものである。したがつて、被告公団は道路法四六条一項一号によつて通行の禁止・制限をすることができたにもかゝわらず、自転車の通行制限の措置をとらず、あるいはこれを求めるために山梨県公安委員会、所轄警察署に何らの措置を求めることなく放置し、また道路法四八条の二により、右道路を自動車専用道路に指定し、もつて自転車を右道路から排除できるのに、この指定もなさず、漫然通行料金を徴収して自転車の通行を認めていたものである。本件事故はこのような被告公団の道路管理上の瑕疵にもとづいて発生したものである。

4 被告山梨県

被告山梨県は国家賠償法一条による義務。すなわち、山梨県公安委員会および大月警察署は、所轄管内の公共の安全の確保および交通の取締等の責務を有し(警察法二条)、右責務にもとづいて道路の通行禁止・制限をする権限を有する(道路交通法((以下道交法という。))四条、昭和四六年法律第九八号による改正前は七条)から、所轄管内である本件事故発生地点付近道路における危険を防止し、交通の安全を図るために車両等の通行の禁止・制限等適切な措置を講ずる義務がある。笹子トンネル内を大型自動車の通行と共に自転車の通行を認めることは、事故発生の具体的危険性の高いものであつたから、山梨県公安委員会および大月警察署は、一般的にトンネル内を自転車が通行することを禁止するか、大型自動車と共に自転車が通行することがないように信号等の設置をして各通行時間帯をずらすなどの措置を講ずる義務があつたにかかわらず、これを放置していたため本件事故が発生した。

山梨県公安委員会および大月警察署に対し右のような一般的な注意義務が認められないとしても、本件事故発生当時、その直前にトンネル内で発生した他の交通事故のため交通が停滞してトンネル内道路の通行が禁止され、その通行禁止解除後においてはトンネル内の両車線とも交通量が多く混雑を極めていた状況のもとでは、先を急ぐ車両のために事故の発生の危険性が一層高かつたから、大月警察署としては警察官を派遣して交通整理にあたらせ、一時自転車の通行を制限するか、自転車の通行を認める場合にも大型自動車と同時に通行しないように、通行時間帯を調整するなどの措置を講ずべき注意義務があつたのに、これを怠つたため本件事故が発生した。

なお、前記改正前の道交法七条による通行の禁止・制限の権限行使は慎重にされなければならないが、交通の安全確保の責務を有する公安委員会および警察署は、本件のように通行の安全に対し具体的な危険が生じた時には右権限を行使しなければならず、これを怠つたために一般国民に危害を生ぜしめた場合には右責務を十分に果さない違法があるといわなければならない。

5 笹子トンネル内道路での交通制限の必要性(被告公団および被告山梨県の主張に対する反論)

本件笹子トンネルは、その建設当時構造、照明等交通安全について配慮された画期的なものであつたにしても、その後十数年間における自動車交通量の激増、自動車の顕著な大型化を看過して、建設当時の完備性を語ることは意味がない。自転車による事故が、本件事故時まで一件もないということも、本件事故当時のようにトンネル内の混雑した交通状況のもとで、交通制限をする必要がないとの根拠とはなりえない。さらに自転車の通行を禁止することは自転車利用者に多大の不便をもたらすことを一般的には首肯しえても、自転車利用者の生命・身体の安全の確保のためにはその不便を忍ぶことになつてもやむをえない場合があり、昭和四五年度の右トンネル道路の自転車通過量は一日平均三台であつたから、その通行を禁止・制限しても社会経済的必要性を抑圧するものとはいえない。

(三)  損害

1 入院治療費 二一、七三〇円

勝沼町立診療所、山梨療養所、奥鹿教湯温泉病院における入院料、付添人食費、寝具代、付添費、文書料等の合計である。

2 入院中の通信費 一〇、〇〇〇円

自宅と入院先との間の電話代の合計である。

3 入院雑費 六九、五〇〇円

入院一日につき五〇〇円の割合による一三九日分である。

4 薬品およびレントゲン写真代 一七、四〇〇円

原告は本件傷害の治療のため、アリナミン、カルシウム剤、パテックスを服・貼用し、また患部をレントゲン撮影し、その費用として合計一七、四〇〇円を要した。

5 器具購入費 二、七九〇円

原告は本件事故によつて衰えた筋肉を回復させるため、筋肉回復のための器具である鉄アレイ、エキスパンダーを購入し、その代金として二、七九〇円を支出した。

6 交通費 一三三、一三〇円

原告は転医・検証立会のためなどの交通費として一三三、一三〇円を要した。

7 休業損害 三八七、六八一円

原告は、本件事故当時株式会社ダイハツ前橋製作所に勤務し、毎月平均五五、三八三円の収入を得ていたところ、本件事故による傷害の治療のため、昭和四五年九月一四日から同四六年四月一八日までの間休業を余儀なくされ、これによつて三八七、六八一円を下らない額の損害を蒙つた。

8 慰藉料 一、〇〇〇、〇〇〇円

原告の傷害の部位・程度、治療経過、後遺障害等に照らし、原告が本件事故によつて蒙つた精神的損害に対する慰藉料として一、〇〇〇、〇〇〇円が相当である。

9 損害の填補 四二七、四一四円

原告は本件事故による損害の填補として自賠責保険から四二七、四一四円の支払を受けた。

10 弁護士費用 二〇〇、〇〇〇円

以上により原告は被告ら各自に対し一、二一四、八一七円を請求しうるものであるところ、被告らは任意の支払に応じないので、原告は弁護士である本件原告訴訟代理人両名に本訴訟提起を委任し、その費用および報酬として、原告は第一審判決言渡日に二〇〇、〇〇〇円を支払うことを約した。よつて右金額は本件事故により原告の蒙つた損害として被告らが支払うべきものである。

(四)  結論

よつて、原告は、被告ら各自に対し一、四一四、八一七円およびこれに対する被告ら宛本訴状送達日の翌日以降の日である昭和四六年一一月一〇日から支払済に至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

(五)  被告会社の抗弁に対する答弁

右抗弁事実は争う。

二  被告会社、同早川の答弁および抗弁

(一)  答弁

請求原因(一)1ないし4は認め、5の事実中、原告が被告車と接触したこと、被告車の風圧等によつて転倒したことは否認、その余は認め、6の事実中、傷害および後遺障害の程度は不知、原告が昭和四五年九月一三日から同四六年三月二六日までの間入院し、その後通院治療を受けたことは認める。

同(二)1の事実中、道路の状況および被告車の車幅が原告の主張のとおりであることは認め、その余は否認する。

同(二)2の事実中、被告会社が被告車の運行供用者であることは認める。

同(三)1ないし8および10は不知、9は認める。

(二)  被告会社の抗弁(免責)

被告早川は笹子トンネル内において被告車を運転して原告を追い越すに当つての運転操作について何ら非難さるべき点はなく、また被告早川は右追越しに際し車幅の約三分の一を反対車線にはみ出して走行したから被告車と原告との間隔は一メートルあり、両者は接触していない。現に被告車には接触痕がみられない。本件事故は原告の自転車運転上の不注意か、道路管理者の管理上の瑕疵かによつて発生したものであつて、被告早川には過失はなかつた。そして、被告車に構造上の欠陥および機能の障害はなかつたから、被告会社は本件事故によつて原告に損害が生じたとしてもその賠償義務はない。

三  被告公団の答弁および主張

(一)  答弁

請求原因(一)1ないし4は認めるが、冒頭部分および5、6は不知。

同(二)3の事実中、本件事故当時被告公団が笹子トンネル内の有料道路の管理者であることは認め、その余は争う。

同(三)1ないし8および10は不知、9は認める。

(二)  主張

被告公団は、建設大臣の許可を受けて新設しまたは改築した道路については料金の徴収期間の満了の日まで、当該道路の維持、修繕および道路法一三条一項に規定する災害復旧を行ない、その場合においては当該道路の道路管理者に代つてその権限のうち、道路整備特別措置法(以下措置法ともいう。)七条一項一号ないし一四号に掲げるものを行なうとされている(措置法三条一項、四条、七条一項。)

1 道路法四六条

そこで、被告公団は、道路管理者(本件笹子トンネル内の道路については建設大臣)に代つて道路法四六条の規定により道路の通行を禁止しまたは制限する権限を有する。しかし、道路法四六条一項は、「道路管理者は、道路の破損、欠壊その他の事由により交通が危険であると認められる場合および道路に関する工事のためやむを得ないと認められる場合に通行の禁止、制限をすることができる。」旨定めており、右の「その他の事由」とは、道路の破損、欠壊に類似する事由を指すにすぎず、道路幅員が非常に狭く、自動車と自転車とを同時に通行させることが極めて危険であるというような場合は含まれない。そのうえ、本件の笹子トンネル内の道路は昭和三三年八月一日政令第二四四号道路構造令に完全に合致しており、右トンネルは当時構造、照明等交通安全について充分に配慮されたうえ築造されているから、トンネル内の道路幅員が狭すぎて、危険であるという主張は当らない。また、本件事故当時右トンネル内の道路において道路に関する工事も行なわれておらず、道路の破損、欠壊はなかつたから、被告公団が道路法四六条一項にもとづいて右道路の通行の禁止、制限をなしうべき限りではなかつた。

2 道路法四八条の二

被告公団は、道路管理者に代つて道路法四八条の二第二項による自動車専用道路を指定する権限を有しない(措置法七条一項)から、被告公団が右指定を行なわなかつたことが、本件笹子トンネル内の道路の管理上の瑕疵であるとの原告の主張は失当である。

3 自動車専用道路指定の可能性

さらに、笹子トンネル内の道路は自動車専用道路としての配慮がなされておらず、以下のとおり、右指定の要件を充さない道路である。

(1) 道路の区域を定めて自動車専用道路に指定するのは、当該道路の区間に他の一般交通の用に供する部分があつて自動車以外の方法による通行に支障がない場合に限られる(道路法四八条の二第二項)。

しかし、笹子トンネル内の道路の区間には、笹子峠を山越えする旧道があるが、右は急勾配の砂利道で自転車で通行することは到底不可能である。また、原動機付自転車、荷車、人等も旧道の通行を余儀なくされることになるが、これらの通行についてもかなりの支障がある。

(2) 自動車専用道路と他の道路等との交差は原則として立体交差としなければならず(道路法四八条の三、四八条の四)、また自動車専用道路に他の道路等を連結する場合には、当該自動車専用道路の効用を妨げない方法で連結しなければならない(同法四八条の四)。そして自動車専用道路と他の道路等との連結についての建設省が定める基準は、連結道路等が不特定多数の人の用に供されるものであり、かつこれを利用する者が自動車以外の方法で専用道路を通行するおそれのないこと、連結する他の道路等の連結地点との間隔が五〇〇メートル以上離れた箇所であること、連結する道路等の連結地点の自動車専用道路の勾配が三パーセント未満でかつ直線区間に限ることなどである。

しかるに、本件トンネル内の道路は、トンネル部分の外に甲府側に二、六〇〇メートル、大月側に六〇〇メートルの取付道路があり、右取付道路は概ね六パーセント程度の勾配を有し、多数の道路等との平面交差と連結を有し、とりわけ大月側については人家が多く存在しているので、右トンネル道を改造し自動車専用道路とすることは現在では事実上不可能に近い。

(3) 本件トンネル内の道路を自動車専用道路に指定した場合、右道路を自動車以外による方法で通行することが禁止されるばかりか、みだりに人が立入ることも禁止され(道路法四八条の五)、かつ違反行為に対する道路管理者の措置・命令に従わない者は三〇、〇〇〇円以下の罰金に処せられる(同法四八条の六、一〇三条)。

しかるに右道路は、通過交通の用に供されているのみならず、沿道住民の住宅・店舗のための道路、近傍住民の農耕・山林作業に欠くことの出来ない道路としてそれぞれ重要な役割を果している。かかる生活に密着した道路を自動車専用道路に指定して、自動車以外による通行を排除するばかりか、人の立入さえも禁止することは、道路利用の社会的経済的必要を抑圧し、地元住民の生活利便を無視するものであつて、公共福祉の見地から到底許されない。

4 本件事故の原因

自動車の運転者は、ハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ道路、交通および当該車両の状況に応じ他人に危害を及ぼさない速度と方法で運転する義務がある(道交法七〇条)。それとともに、他の車両を追い越す場合には、反対の方向からの交通に充分注意し、かつ前車の速度および進路ならびに道路の状況に応じてできる限り安全な速度と方法で進行する義務がある(同法二八条三項)。

本件トンネル内は追越禁止の場所になつているが、自動車が他の軽車両(自転車・荷車等)を追い越すことは、禁止されておらず(同法三〇条本文)、右トンネル内の道路は道路の中央から左側の部分が六メートルに満たないので、自動車が他の車両を追い越す場合、当該自動車は道路の中央から右側の部分にその全部または一部をはみ出して通行することができる(同法一七条四項)。したがつて、右トンネル内において被告早川が被告車を運転して原告車を追い越す場合には、原告に危害を及ぼさないよう反対車線にはみ出してでも原告車との間隔をあけ安全な速度で追い越すとか、交通の状況からして直ちに追い越すことが不適当な場合には、しばらくは原告車の後方を追従進行し安全を確認したうえで同車を追い越せばよいのである。ところが、被告早川が右義務に反した運転をしたため本件事故が発生したのである。本件事故原因は、専ら被告早川の運転上の過失にあるから、これが被告公団の道路管理の瑕疵によるとの原告の主張は失当である。

四  被告山梨県の答弁および主張

(一)  答弁

請求原因(一)1ないし4は認め、5は否認し、6の事実中、原告が骨盤骨折、後腹膜血腫の傷害を受けたことは認め、その余は不知。

同(二)4は争う。

同(三)1ないし8および10は不知、9は認める。

(二)  主張

1 道交法による公安委員会等の交通規制の義務

道交法四条、五条(昭和四六年法律第九八号による改正前はいずれも七条)、同法施行令三条の二(昭和四六年政令三四八号による改正前は六条)にいう歩行者または車両等の通行の禁止・制限措置は、一般統治権にもとづき警察上の目的のために国民に対する不作為義務を命じたもので、公安委員会もしくは警察署長が必要と認めるとき裁量によりなされる行政行為である。したがつて一般国民はこれを国または地方公共団体に対し権利として要求することができる性質のものではない。また右道交法の規定自体からしても公安委員会等が通行の禁止・制限をする権限を付与されているにすぎず、国民がこれを求める権利はない。本件においても、山梨県公安委員会が笹子トンネル内道路につき通行の禁止・制限の措置をなすべき作為義務があるわけではないから、右措置をとらなかつたといつて違法行為を行なつたとはいえない。

右の通行の禁止・制限措置は、道路・橋梁等が損壊し道路交通上の危険が生じたときにおける道路・橋梁の通行禁止、大型車両の通行制限、交通混雑場所での車両の通行禁止等極めて具体的な必要がある場合に限つて行なわれるべきものである。本件のようにトンネル内の道路でその幅員が狭いから大型自動車とともに自転車の通行を認めることは危険であるというだけでは右の必要があるとはいえない。

また、公安委員会が行なう通行の禁止・制限の措置は道路の区間を限つてなされるべきものであり、警察署長が権限を委任されてなす措置は期間が一か月に限られているところ、原告はこれらについて何ら具体的な主張をしていないのでその主張には具体的な根拠がない。

2 通行禁止等の一般的必要性

本件事故当時、一般的に笹子トンネル内の道路の通行の禁止・制限措置を行なう必要があつたとはいえなかつたことは次に述べるとおりである。

笹子トンネル内道路は、長さ約三キロメートル、幅員六・五メートル(片側三・二五メートル)、一キロメートル毎に追越禁止標識が設置され、四か所に待避所が設けられ、交通の危険の防止が図られていて、本件トンネル内道路の使用開始以来本件事故を除いて自転車乗用者の交通事故は一件もなく、その他の車両による事故が多発する場所でもない。

笹子トンネル内道路の自転車通行の禁止・制限をする場合自転車利用者は旧道を通行しなければならず、旧道は長さ約一三キロメートル、幅員約五・五メートルの非舗装の勾配の多い山道であるから、甚だしく不便であり、右措置は交通の円滑を阻害することになる。

3 通行禁止等の具体的必要性

大月警察署長は、本件事故発生直前本件トンネル内の道路に警察官を派遣、具体的な道路状況に応じて車両通行制限等の措置をなすべき注意義務もなかつた。

山梨県塩山警察署警察官らは、本件事故の発生日である昭和四五年九月一三日被告公団管理事務所から、笹子トンネル内で大型貨物自動車が左後輪の故障によつて左へ傾き停車し、そのため交通が渋滞していることを理由に、その排除を求められ、午前九時三〇分頃現場へ急行し、午後一時頃から右車両をシヨベルカーでトンネル外へ排除するためトンネル内道路上の車両の通行を全面的に禁止し、右作業を終えたのち、午後三時二五分頃右の通行禁止を解除した。右警察官らは、午後一時以前においては右トンネル内では片側交通をさせ、その交通整理にあたつていたが、通行禁止後本件事故発生時まで大月方面へ向う車両は渋滞していたが、甲府方面へ向う車両は平常の運行に復していたので、警察として交通整理する必要がなかつた。

本件事故当時、原告および被告早川が各運行する甲府方向車線においては交通の混雑があつたわけではなく、本件事故は交通の混雑が原因で発生したものではない。

第三証拠関係〔略〕

理由

一  事故の発生(全被告共通)

いずれも〔証拠略〕によると、原告は、昭和四五年九月一三日午後四時頃山梨県大月市笹子町黒野田笹子トンネル内有料道路(以下本件道路ともいう。)を甲府方面に向け原告車で走行中、大月市側入口から甲府市寄約六〇〇メートル地点の路上において同方向に進行していた被告車に追い越された際、原告車と共に転倒し受傷したことが認められ、右認定に反する証拠はない(原告と被告早川、同会社との間では右事実は争いがなく、原告と被告公団、同山梨県との間では、転倒および受傷の事実を除き右事実は争いがない。)。

二  責任原因

(一)  被告早川

1  事実

〔証拠略〕によれば次のとおりの事実を認めることができる。

(1) 本件事故現場は笹子トンネル内の有料道路上であるが、右道路は、歩車道の区別はなく(人の通行は禁止されていない。)、幅員約六・五メートル(片側一車線でその幅は約三・二五メートル)、白色ペイントで中央線が表示され、道路脇に約〇・二五メートル幅の若干傾斜した路肩があり、その路肩端から約〇・二五メートル中央寄りの処に白色ペイントで外側線が表示された半円柱状のトンネル壁内の直線のアスフアルト舗装道路である。右トンネル内での法定最高速度は毎時五〇キロメートルで、追越禁止とされている。道路両側のトンネル壁に六メートル間隔で設置されたナトリウム灯によつて平均四〇ルツクスの照度が維持され、見通しは良好である。

(2) 被告早川は、昭和四五年九月一三日午後四時頃空荷の被告車(車幅約二・五メートル、車長約一二メートル、車高約三・三メートル、最大積載量約九トン、車両重量一〇・八トン、車両総重量約二〇トンの大型貨物自動車)を運転し、笹子トンネル内の本件道路の甲府方向車線(以下下り線という。なお大月方向車線を上り線という。)上を中央線を若干越えて毎時約五〇キロメートルの速度で走行し、本件事故現場付近に差しかかつた。同被告は、事故現場の約二四メートル手前で、約一六メートルやや左斜め前方路上を原告が原告車(ハンドル幅約四二センチメートル、ハンドルまでの車高約一メートル、車長約一・七メートルのサイクリング用足踏自転車)で同方向に走行しているのを認めたので、被告車の接近を原告に知らせるべく二度警音器を吹鳴し(この直後被告早川が被告車の速度を減じたかについては、被告早川のこれに沿う供述があるが、前記甲第九号証および検証の際の同被告の指示説明に照らしにわかに採用し難く、他に右事実を認めるに足りる証拠はない。)、さらに右に若干転把して中央線を越えて進行して原告車の追越しを試み、特段異常を感じないまま追越しを完了した。その直後同被告が被告車の左側サイドミラーによつて後方路上を確認したところが、被告が最初に原告を発見した地点から約八メートル甲府方向へ進行した地上の路上において原告が自転車と共に転倒しているのを発見したので、即座に被告車の制動をかけた。被告車は原告の右転倒地点から甲府方向へ約一七メートル進行した後停止し、被告早川は直ちに被告車に同乗していた運転助手と共に被告車から降りて原告の許へ赴いたところ、原告は転倒時の受傷のため歩行不能であつたので、手を貸して原告を被告車の運転席に乗車させ、最寄の勝沼町立診療所へ運び込んだ。

(3) 原告は、前記九月一三日大月方面から甲府方面へサイクリングすべく、同日午後四時頃本件道路の下り線の外側線付近上(外側線からトンネル壁までの距離および前記路面の状況からして外側線の外側すなわちトンネル壁側を常時走行することは困難であると認められる。)を原告車で毎時約一五キロメートルの速度で走行し、本件事故現場に差しかかつた。原告は、そのとき警音器の吹鳴によつて後方から大型自動車が接近してくるのを感知したので、こころもち原告車をトンネル壁側へ寄せて進行を続けたが、被告車の前車輪が原告車とほぼ横一線に並ぶ状態になつたとき、被告車との接触の危険を感じ、ために原告車の車輪を道路左側の路肩部分に進入させ、乗車姿勢の均衡を失し、原告車は左側トンネル壁側へ、原告自身は右側道路中央へ倒れかかり、進行中の被告車の左後輪のタイヤの側面と原告の右側腰部付近とが接触し、それと相前後して原告は路上に転倒したものである。

以上の事実が認められ、次に述べるもののほか右認定に反する証拠はない。

2  被告早川の主張についての判断

被告早川は、同被告が被告車で原告車を追い越した際、被告車の約三分の一位を中央線から上り線へ進入させて走行していたから、そのときの被告車と原告車との距離は約一メートルであつたこと、原告との接触の衝撃は感じられなかつたこと、被告車の車輪に接触痕も残つていないことから被告車と原告とは接触していないと主張し、これに沿う被告早川本人尋問の結果および同被告の検証時の指示説明がある。

(1) 被告早川が被告車で原告車を追い越したとき、被告車がどの程度中央線を越えていたかについて、同被告本人尋問の結果中には、越えた部分は被告車のタイヤ一本分で、約四〇センチメートルである旨および同被告が検証時被告車の車体の幅の三分の一が中央線を越えたと述べたのは、同被告は被告車のタイヤ一本分と記憶していたが、運転中の距離感覚ではこれが被告車の車体の三分の一と表現した距離と同一であつたためである旨の各供述がある。これと前記被告車の車幅(約二・五メートル)を合せて考えると、被告早川の右の点に関する供述の趣旨は、被告車は約四〇ないし約八〇センチメートル中央線を超えていたとするものであると理解すべきである。

(2) ところで、被告早川は、被告車が原告車を追い越す前後の進行状況につき、同被告本人尋問において、同被告が最初に原告車を発見したときは、被告車は中央線を越えるか、越えない程度で走行していたが、原告車を追い越すときには被告車を右に寄せ、その結果被告車は約四〇ないし約八〇センチメートル中央線を越えたと述べている。しかし、前記甲第九号証(実況見分調書)には、被告早川が、原告車を追い越す際、右に転把したとか、被告車が中央線を越えて走行した旨の記載はなく、右実況見分調書の添付図面および被告早川の指示説明として、被告早川は原告車を最初に発見した地点において既に被告車を中央線を若干越えて走行させていて、そのまま直進して追い越した旨記載されている。また、後述(二(四)3(1)(Ⅳ))のとおり、本件事故当時本件トンネル内の道路の上り線上には対向車両が多かつたこと、〔証拠略〕により、同被告が原告車を追い越す際、被告車の方向指示器を出さなかつたことが認められること、前記のとおり右追越し時の被告車の速度は毎時約五〇キロメートル、被告早川が原告車を最初に発見したときの両者の距離は約一六メートルであつたこと、ならびに本件トンネル内の道路の幅員が片側車線で三・二五メートルであることなどを合せ考えると、被告早川が被告車で原告車を追い越す際、同被告の尋問結果に示すような運転を行ない、中央線を大幅に越えていたとすると、対向車との衝突の危険が極めて大きかつたというべきである。同被告が原告車との接触の具体的危険を感じていなかつたにもかかわらず、原告車との接触を避けるため発見から追越し迄二秒位の間に右のような危険な運転操作を行なつたとは到底考え難い。したがつて、被告車が右追越し時中央線を越えていたとしても、それは多くとも約四〇センチメートルを越えない程度のものであつたと認めるのが相当である。

(3) 右にもとづいて本件事故発生時の被告車と原告車との距離について、前記本件道路幅、原・被告車の各車輪等ならびに検証の結果によつて検討する。本件道路の下り線の外側線から中央線までの距離は三メートル、被告車の車幅は約二・五メートルであり、被告車が原告車を追い越した時多くとも約四〇センチメートル中央線を越えていたにすぎないから被告車の左側と外側線までの距離は約九〇センチメートル以下となる。そのとき前記のとおり原告車は下り線の外側線の若干壁寄りの路上を走行していたから、原告車はそのハンドル幅の約半分すなわち約二一センチメートルが外側線から中央線側にあつたことになる。そして、原告自身の身体(腕、脚等)幅を考慮に入れると、事故発生時の被告車と原告車との相互の距離は約六〇センチメートル以下であつたと考えられる。この点につき、被告早川本人尋問の結果中に、右の距離は一メートルであつた旨の供述がある。しかし被告車の運転席の位置、サイドミラー位置、性能ならびに同被告本人尋問の結果によると、被告車が原告車と横一線に並んだ前後においては、被告早川は原告車の位置を確認することはできず、相互の距離関係を把握しうる状態にはなかつたものと認められるから、同被告の右の点についての認識には正確を期し難いところがあるというべく、前記認定の事実に照らしても、右被告早川本人尋問の結果はにわかに採用することはできない。

(4) 本件道路状況、原・被告車の大きさ、速度、構造に照らすと、右に述べたような原・被告車間の距離関係において、原告車が被告車と並進したとき、原告が運転姿勢の均衡を失い、中央線寄りに倒れかかり、そのため被告車に接触するという可能性は充分考えうるところであるから、原告と被告車とは接触しなかつたとの被告早川の本人尋問の結果はにわかに措信し難い。さらに、同被告本人尋問の結果によると、同被告は原告と接触があつたとされるべきとき接触の衝撃を感得しなかつたことが認められ、そして、被告車の左後車輪に接触痕があつたと認めるに足りる証拠はないが、前記原・被告車の重量、速度、接触部分、検甲第一号証の検証の結果に鑑みると、右はいずれも前記認定の妨げとなるものではない。

3  評価

そこで、別記認定の事実によつて考えると、被告早川は、本件道路を被告車で運行し、同方向車線道路端を足踏自転車で先行する原告を追い越すに当つては、自転車と適切かつ安全な距離を保つたうえで徐行する義務があつたというべきである。しかるに、同被告は、原告車を追い越すに際し、漫然毎時約五〇キロメートルの速度で原告車の側近を追い越した過失によつて本件事故を発生させたものである。そうすると、同被告は、民法七〇九条により原告が本件事故によつて蒙つた損害を賠償する義務がある。

(二)  被告会社

被告会社が、被告車を自己のため運行の用に供していたことは原告と被告会社との間で争いがなく、被告早川が過失によつて本件事故を発生させたことは(一)に述べたとおりであるから、被告会社の抗弁は理由がなく、同被告は自賠法三条により、原告が本件事故によつて蒙つた損害を賠償する義務がある。

(三)  被告公団

1  笹子トンネル道路の管理者

〔証拠略〕によると次のとおりの事実が認められ、この認定に反する証拠はない。

本件笹子トンネル道路を含む道路の路線名は一級国道二〇号で、右トンネルの所在位置は山梨県大月市笹子町と同県東山梨郡大和村間であること、右トンネル道路の位置は、右国道のうち道路法一三条一項所定の「指定区間」以外のところに所在していたので、同条一項によつて右国道二〇号線中の笹子町と大和村を結ぶ区間の維持・修繕等の道路管理は山梨県知事が行なつていた。

被告公団は、本件笹子トンネル道路の新設に当つて昭和三一年九月一一日付書面で道路整備特別措置法六条にしたがい道路管理者である山梨県知事と協議し、同県議会の議決を経た同意を得た。被告公団は昭和三三年一一月右トンネル道路を完成し、その旨の公告後は措置法四条、七条によつて国道二〇号線のうち右トンネル道路を含め、山梨県大月市笹子町黒野田三三四―二番と同県東山梨郡大和村日影二〇二―二番地間総距離六、二六八メートルについて、道路の維持、修繕および道路法一三条一項所定の災害復旧を行ない、その場合道路管理者である山梨県知事に代つてその権限のうち同法同条一項各号に掲げるものを行なうものとなつた。

以上の事実が認められる。

これによると、被告公団は、笹子トンネル道路については山梨県知事に代つて道路法四六条の規定によつて道路の通行禁止・制限をし、同法九五条の二(昭和四六年法律第四六号による改正前の四八条三項)によつてこれにつき公安委員会等に通知等をする権限を有することが明らかである。

2  道路法四六条一項の道路通行の禁止・制限

道路法四六条一項一号は、道路管理者の権限による道路通行禁止・制限(以下通行制限ともいう。)の一事由として、道路の破損、欠壊その他の事由により交通が危険であると認められる場合を掲げている。右の文言からすると、道路管理者は、道路の破損、欠壊のほかいかなる事由によるも交通が危険であると認められる限り通行制限をなしうると解する余地がないではない。

しかし、道路法は、道路網の整備を図るため、道路に関して路線の指定および認定、管理、構造、保全、費用の負担区分等に関する事項を定め、もつて交通の発達に寄与し、公共の福祉を増進することを目的とし(同法一条、右四六条の規定がある同法第三章第二節道路の保全中の四二条一項は、道路管理者は、道路を常時良好な状態に保つよう維持し、修繕し、もつて一般交通に支障を及ぼさないように努めなければならないと定めている。また、前記改正前の同法四八条三項は、「道路管理者は、四六条の規定により道路の通行を禁止し、または制限しようとする場合においては、あらかじめ当該地域を管轄する警察署長に禁止または制限の対象、区間、期間および理由を通知しなければならない。緊急を要する場合で、あらかじめ警察署長に通知するいとまがなかつたときは、事後においてすみやかにこれらの事項を通知しなければならない。」と定め、同条一項、二項と合せてみても、比較的簡単な手続で道路通行制限をなしうるとされている。これらの各規定の趣旨等に鑑みると、道路法が四六条一項において、道路管理者は、道路の構造を保全し、又は交通の危険を防止するため、道路の破損、欠壊その他の事由により交通の危険があると認められる場合、通行の禁止制限をなしうると定めている趣旨は、道路管理者がその権限事項である道路の維持、修繕という管理行為によつて、交通の危険の原因である事由(道路の破損、欠壊その他の事由である。)を除去し、道路を良好な状態に復し、もつて交通に支障がないようにしうることを前提としたうえで、道路管理者に右の通行禁止制限の権限を与えたものと解するのが相当である。このことは同条一項二号所定の、道路に関する工事のためやむを得ないと認められる場合、なる文言によつても裏付けられる。そうとすると、同条一項一号所定の「道路の破損、欠壊その他の事由」とは、道路の物理的な欠陥に限らないが、道路管理者が道路の維持・修繕によつて除去しうるものに限るといわなければならない。

本件において、原告は、本件笹子トンネル道路は幅員が狭いため、大型自動車と自転車とを同時通行させることは危険であつたから、被告公団は道路法四六条一項によつて自転車の通行制限をするべきであつたと主張する。

しかし、原告が右道路において交通の危険の原因として主張する道路幅員が狭少であることを改善・除去する、すなわち道路幅員を拡張するには、右道路がトンネル内道路であること等前記道路状況に照らし、道路の構造自体の変更、換言すれば、その改築工事によらなければならないというべきであつて、道路管理者の行なう道路の維持・修繕によつては到底右道路の幅員を拡張することはできないことは明らかである。そうすると、本件事故当時、原告が主張するように、道路幅員が狭少であるため交通の危険があると認められるとしても、道路幅員の狭少が、被告公団が行なつた道路の維持・修繕の不備によつて生じたとの主張・立証がない本件においては、先に述べたところから被告公団が道路法四六条一項一号に該当するとして自転車通行の禁止制限をなしえた限りではないといわざるをえない。

なお、右のような場合においても、被告公団が道路通行の制限として、自転車の通行禁止をなしうるとするときは、道路の改築のあるまで不定の期間自動車のみの通行を許すこととなり、これは道路法四八条の二第二項所定の自動車専用区域の指定の実質を有するものとなるといわなければならない。しかし、後述のとおり、被告公団は、道路管理者に代つて四八条の二に定める事項を行なう権限を有しない(措置法七条)から、被告公団が原告主張のような場合に通行制限をなしうるとすることは、措置法七条、道路法四八条の二の立法趣旨を潜脱することになり、この意味からも到底容認することはできない。

3  道路法四八条の二による自動車専用道路または区域の指定

被告公団は、前述のとおり、本件トンネル道路の新設、改築、維持、修繕および道路法一三条一項に規定する災害復旧を行ない、その場合措置法七条によつて同条一項各号に掲げられた事項について道路管理者である山梨県知事に代つてその権限を行なうものである。これらの事項はいずれも道路の新設等に付随するところの区域の決定、維持修繕の内容そのものたる各種工事の施行、これに伴う通行の制限等にすぎないから、被告公団が右知事に代つてこれと性質を異にする自動車専用道路の指定権限も行ないうると類推解釈すべきではない。むしろ措置法七条一項各号には、道路法四八条の二による自動車専用道路の指定等は含まれていないから、被告公団は、道路法四八条の二に規定された右指定等を行なう権限を有しないと解すべきである。

したがつて、被告公団が本件事故当時道路法四八条の二に定める各事項を行なうべきであつたのにこれを行なわなかつたから、本件道路の管理に瑕疵があつたとの原告の主張は、それ自体失当で、採用の限りではない。

4  結論

右のとおり、被告公団は、本件において道路法四六条、四八条の二の権限を行なうことはできず、右権限を行なわなかつたことが管理の瑕疵であるとする原告の主張は失当であり、その他本件道路につき被告公団の管理の瑕疵があつたとの主張・立証はない(本件道路の幅員が狭少であること自体は、被告公団の管理の瑕疵によるものとは理解することはできない。)。

(四)  被告山梨県

1  道交法による公安委員会または警察署長の交通規制の義務

公安委員会は、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図るため必要があると認めるときは、当該道路につき区間を定めて歩行者または車両等の通行を禁止し、または制限することができ(前記改正前の道交法七条一項)、さらに、政令で定めるところにより、右の禁止または制限のうち区間または期間の短いものを警察署長に行なわせることができる(同条二項)。そして、警察の責務(警察法二条)および公安委員会の権限(同法三八条)に照らすと、公安委員会もしくは警察署長は、道路および交通の具体的状況によつては、道路における危険を防止するなどのため、歩行者または車両の通行制限をなすべき義務が存する場合があるといわなければならない。しかし、公安委員会もしくは警察署長が道路における交通事故の発生等の危険を防止するため通行の制限をなすべき義務があるというためには、当該道路の規格、構造、設備等の状況、当該道路上の交通量、交通の種類、形態、道交法等による交通規制の内容等道路および交通の状況にもとづいて、当該道路上での交通事故の発生等の危険を、一般的、抽象的にとどまらず(車両交通の用に供せられる道路では抽象的には常に交通事故の発生を予見することができるといいうる。)、具体的かつ相当の蓋然性あるものとして予見しうる場合であることを要すると解するのが、警察法一条、二条、三八条、道交法一条、七条の各規定の法意ならびに道路の用途・目的に適う所以である。

2  本件道路の構造的欠陥による具体的危険の存否

(1) 本件笹子トンネル道路の状況の概要は、前記二(一)1(1)で認定したとおりであるほか、〔証拠略〕によれば次のとおりの事実を認めることができ、この認定に反する証拠はない。

(Ⅰ) 本件笹子トンネル内の道路は、総延長三、〇〇三メートル、直線でほぼ平坦なアスフアルトコンクリート舗装である。道路構造は建設当時(昭和三三年)施行の旧道路構造令に合致した内容のものであり、照明設備としてナトリウム灯が設置され、入口付近において外部の明るさを漸次緩和するよう設備されている。右トンネル内の換気設備は、半横流式と縦流式が併用され、トンネル内の火災の発生あるいは煙霧量によつて自動的に風量が調節される装置が設置されている。また、右トンネル内に、緊急待避所が四カ所設けられており、車両の待避、転回が可能である。

(Ⅱ) 右トンネル道路は昭和三三年一二月八日供用が開始されたものであるが、昭和三四年から同四五年までの間に右道路を利用通行した車両(自転車)総数、そのうち乗合自動車(路線を除く。)および大型特殊自動車総数ならびに軽車両および自転車総数は別表のとおりである。

(Ⅲ) 右道路の供用が開始されて以来、自転車乗用者が右トンネル内で交通事故に遭つて、被告公団に報告したのは本件事故が始めてである。

以上の事実が認められる。

(2) 右に認定した本件トンネル道路の状況、原・被告車のような大型自動車あるいは自転車の前記車幅、車長、公安委員会もしくは警察署長のもちうべき、自動車あるいは自転車運転者が一般的には交通法規等を遵守して右道路上を運転走行するとの期待(右トンネル道路において特に交通法規違反事犯が多かつたと認めるに足りる証拠はない。)とを総合すると、本件トンネル道路上に大型自動車と自転車とを同時通行させるときは、その幅員が狭少であることが原因で、右両者が接触するなどの交通事故が発生することを具体的かつ相当の蓋然性をもつて予見しえたとは認め難いから、公安委員会もしくは警察署長は一般的に右トンネル道路内において自転車等の通行を制限する義務があつたとはいえない。

3  本件事故当時の状況下での具体的危険の存否

(1) 〔証拠略〕によれば、次のとおりの事実を認めることができ、この認定を左右するに足りる証拠はない。

(Ⅰ) 昭和四五年九月一三日(本件事故発生当日)午前二時頃本件トンネル道路上り線の甲府側入口から約八〇〇メートルの地点において、砂利を積載した大型貨物自動車が左後車輪を破損させ、そのため車両全体が左傾斜して走行不能となり、他車両の交通の障害となる事故が発生した。被告公団東京支社の職員らは、右事故の報告を受け、その頃からトンネル道路の下り線を使用させての片側交互通行との車両通行規制を実施した。

(Ⅱ) 被告公団東京支社の本件道路管理事務所は同日午前九時三〇分頃山梨県大月および塩山各警察署へトンネル内道路の交通規制および右大型貨物自動車の排除を依頼し、これにもとづいて所轄の塩山警察署警察官が約一〇名右現場に出動し、交通規制に従事すると共に、午後一時四〇分頃から大型シヨベルカーによつて右大型貨物自動車を右トンネル外に運び出す作業にとりかかつた。右作業開始後は、トンネル道路全面的通行禁止の措置がとられた。

(Ⅲ) 塩山警察署の警察官らは、同日午後三時三〇分頃までに右大型貨物自動車を甲府側の出入口から運び出し、同車から路上に落ち、たい積した砂利をトンネル内の直近の待避所に移動させる作業を終了し、その後間もなく上下線同時に通行禁止の措置を解除した。

(Ⅳ) 右トンネル道路の上り線では、右解除後一〇分頃まで通行車両が連続し、徐行程度の速度で走行していたが(上り線大月側出入口から約三〇〇メートルのところに料金徴収所が設けられていた。)、下り線では通行車両はほとんど停滞なく徐行以上の速度で走行し、本件事故当時上り線では下り線に比べ通行車両は多かつたが、上下線とも車両交通はほぼ正常な状態に回復しつつあつた。

(Ⅴ) そこで、塩山警察署の警察官は、右大型貨物自動車の運び出し等の作業終了の約一〇分後、交通整理の要もなくなつたものとしてトンネル道路から帰署し、本件事故発生時においては警察官による交通規制は全くなされていなかつた。

以上の事実が認められる。

(2) 右事実を要するに、本件事故発生時の約三〇分前頃まで、本件トンネル道路では全面的に車両通行が禁止されていたが、その後左程の混乱もなく、上下線とも正常な交通状態に復しつつあり、殊に、原・被告車が通行した下り線の通行車両数は上り線と比べてより少なく、車両通行は円滑だつたといいうる。また、右トンネル道路では上下各一車線であることは前述のとおりであるところ、本件事故当時最高速度違反や追越禁止違反を試みる車両があつたりしてトンネル道路で車両交通が混雑・混乱したと認めるに足りる証拠もない。

(3) 以上のようなトンネル道路での交通事情および二(四)2(1)(Ⅰ)の事実にもとづいて考えてみても、本件事故当時原・被告車のような大型貨物自動車と自転車を同時に通行させるときは、両者の接触等による交通事故の発生の危険が具体的かつ相当の蓋然性をもつて予見しえたとは認められないから、被告山梨県の公安委員会あるいは所轄警察署長において本件事故当時トンネル道路上で少なくとも自転車通行の制限をなすべき義務があつたとはいえない。

4  結論

そうすると、被告山梨県の公安委員会もしくは所轄警察署長が、本件事故発生当時本件トンネル道路の交通規制をなす義務があつたのにこれを怠つたとの原告の主張は失当であり、その他被告山梨県の公権力の行使に当る公務員がその職務上の故意・過失によつて本件事故を発生させたとの主張・立証はない。

三  損害(被告早川・被告会社関係)

〔証拠略〕によると、原告は本件事故によつて骨盤骨折、後腹膜血腫、右下肢擦過傷の傷害を受け、事故当日(昭和四五年九月一三日)から同年一一月六日までの間勝沼町立診療所に入院し、後腹膜血腫に対し開腹手術、骨盤骨折に対し大腿骨鋼線牽引療法等の治療を受けたが、左仙腸関節脱臼、恥骨結合離開による両下肢筋力低下、腰椎(下部)捻転の各症状が残存したこと、原告はそのため同年一一月六日から同年一二月一八日までの間山梨療養所に入院し主に機能回復のための訓練等を受け、退院時には左仙腸関節亜脱臼、恥骨結合離開、腰椎捻転による腰部筋の緊張を残すほか神経症状、疼痛はない状態に回復したこと、その後自宅療養をしつつ奥鹿教湯温泉病院への入院できるのを待つて、昭和四六年二月三日から同年三月二六日まで同病院に筋力回復等の治療を受けるため入院したこと、右各病院での治療を受けた結果、昭和四八年九月一八日現在においても恥骨結合離開、腰椎捻転による腰部筋の緊張感等(右足が左足より短い。)の後遺障害の存することが認められ、右認定に反する証拠はない。

以上の事実にもとづいて、原告が本件事故によつて蒙つた損害の額を原告と被告早川および被告会社との関係で算定することとする。

(一)  入院治療関係費残 七八、八三〇円

〔証拠略〕によると、原告は、前記勝沼町立診療所、山梨療養所、奥鹿教湯温泉病院での入院治療費ならびに勝沼町立診療所での付添人食事および寝具代ならびに付添費(原告は勝沼町立診療所入院当時は歩行、起立不能の状態で、付添看護を要し、原告の母が四八日間これに当つた。)のうち社会保険等から支払済の分を除き合計七八、八三〇円(うち付添費は一日一、二〇〇円の割合で四八日分)を要したことが認められる。これは本件事故による損害である。

(二)  入院中の電話代 一〇、〇〇〇円

〔証拠略〕によると、原告は本件傷害の治療のため前記勝沼町立診療所等への入院を余儀なくされたこと、右診療所等は、原告の実家のある長野市内から相当遠距離にあつたため、原告は父母等家族への種々の連絡のため電話を利用し、その費用を要したことがそれぞれ認められ、これらによると、原告は右入院期間中電話代として総じて毎月平均二、〇〇〇円程度(合計は一〇、〇〇〇円を下らない。)の支出を要したものと推認され、右支出は、原告の入院先が実家から遠距離であつたこと等に鑑み、入院雑費とは別に本件事故と相当因果関係に立つ損害として加害者である被告早川、同会社に対し請求しうべきものと認めるのが相当である。

(三)  入院雑費 六九、五〇〇円

右のとおり、原告は勝沼町立診療所等へ一五〇日間入院を余儀なくされ、その間諸雑費の支出を要したと推認されるが、原告は右診療所に入院中は歩行、起立不能で付添看護を要し、原告の母が付添つたこと、右診療所は原告の実家から相当遠距離のところにあつたことはいずれも先に述べたとおりである。これらの事情に照らすと、原告が入院中雑費として要した費用は、前記電話代を除いても、入院全期間を平均して一日五〇〇円合計六九、五〇〇円を下らないと認めることができるから、右は原告が本件事故によつて蒙つた損害である。

(四)  薬品およびレントゲン写真代 一七、四〇〇円

〔証拠略〕によると、原告は、前記自宅療養期間中にアリナミン、カルシユウム剤を服用し、また、患部の湿布のためパテツクスを使用したこと、山梨療養所においてレントゲン写真を撮影し、入院治療費分とは別に保存用の写真代を支出したこと、右の各費用の合計額は一七、四〇〇円であつたことがいずれも認められる。右薬品の効能、原告の本件傷害の内容等に照らすと、右費用合計は、本件事故と相当因果関係に立つ損害と認めることができる。

(五)  器具購入費 二、七九〇円

〔証拠略〕によると、原告は前記治療期間中筋力を回復するための器具である鉄アレイ、エキスパンダーを購入し、その代金として合計二、七九〇円を支出したことが認められる。前記のとおり、原告は本件事故による損害の結果、下肢筋力の低下の症状があり、その回復のための訓練を要したこと、右器具は筋力増強以外の用途はないことおよび右代金額に鑑み、右代金全額が本件事故と相当因果関係に立つ損害と認めるべきである。

(六)  交通費 二〇、〇〇〇円

〔証拠略〕を総合すると、原告は、本件事故による傷害の治療に当つて、勝沼町立診療所から山梨療養所に転院し、同療養所から長野市内の実家に帰り、その後実家から奥鹿教湯温泉病院へ入院し、同病院退院後実家に戻つたこと、右の入退院に際して交通機関として自動車を利用したが、原告の家族が右自動車を所有し、かつ運転したことが認められる。原告の前記傷害の部位・程度に照らし、入・退院のため交通機関として自家用自動車を利用したことによる損害は本件事故と相当因果関係に立つと認めるのが相当である。

原告は右のほか山梨療養所に入院中本件事故現場における所轄警察署警察官による実況見分に立会うためタクシーを利用し、その費用を要したとしてその損害の賠償を求め、〔証拠略〕によると右の事実を認めることができるが、実況見分の立会は捜査機関が行なう捜査に対する原告の任意的な協力と目すべきもので、右タクシー代支出による損害を本件事故と相当因果関係にあり、加害者に負担させるべきとすることはできない。

そこで、原告の右の損害額を算定することとする。原告はこれにつき具体的な立証を行なわないが、山梨県勝沼町、山梨市、長野市、奥鹿教湯間の各距離、普通乗用自動車が右距離を走行するに要すべきガソリン量およびその費用額、原告の親族が運転および付添を行なつたことに鑑み、かつ右距離間をタクシーを利用した場合に要すべき費用額等を参酌すると、右金額は少なくとも二〇、〇〇〇円と推認するのが相当である。

(七)  休業損害 三六七、五九四円

〔証拠略〕によると、原告は本件事故当時株式会社ダイハツ前橋製作所に勤務し、事故前である昭和四五年一月から九月までの間各月給与として、二八、二五二円、三三、五一三円、三四、八九三円、四四、〇〇一円、四八、二二三円、三八、〇七七円、四〇、二五二円、三九、八九三円、四四、四五九円を得、さらに夏期賞与として七三、四八〇円を得ていたこと、本件事故後冬期賞与として七三、四一〇円を得たこと、原告は本件事故による傷害の治療のため事故日の翌日である昭和四五年九月一四日から同四六年五月一四日まで休業を余儀なくされたことが認められる。本件事故後原告は前記会社から給料等を一切支給されていないとの原告本人尋問の結果は右中第七号証に照らし採用せず、他に右認定に反する証拠はない。

右の事実によると、原告の事故前の賞・給与を合計した毎月の平均収入額は、右九カ月間の給与の合計額を九で除した額に賞与合計額を一二で除した額の合計額になるべきで、これを算出すると五一、三〇二円(円未満切捨)となる。そして、休業期間は八カ月であるから、休業による損害額は四一〇、四一六円であるが、事故後受領の冬期賞与中その計算期間六か月(昭和四五年七月ないし一二月)の中の休業期間三か月半に該当する部分四二、八二二円を控除すれば残額三六七、五九四円となる。なお右賞与に固定部分のほか査定部分も含まれるとすれば、右該当部分はなお減少し残額は増加すべき筋合であるが、査定部分の存否は明らかでない。

(八)  慰藉料 一、〇〇〇、〇〇〇円

原告の本件事故による傷害の部位、程度、治療経過、後遺症状に照らすと、原告が本件事故による受傷によつて多大の精神的苦痛を受けたことが推認され、右のほか本件事故の態様等本件に現われた諸事情を斟酌すると、原告の精神的苦痛に対する慰藉料は一、〇〇〇、〇〇〇円を下らない。

(九)  損害の填補 四二七、四一四円

原告が、本件事故による損害の填補として自賠責保険から四二七、四一四円を受領したことは、その自認するところである。

(一〇)  弁護士費用 一五〇、〇〇〇円

右のとおり、原告は被告早川、同会社に対し本件事故にもとづく損害賠償として一、一三八、七〇〇円を請求しうるものであるが、〔証拠略〕によれば、右被告らは原告に対し右の支払をしないので、原告は右債権取立のため本訴請求手続の遂行を弁護士雪入益見、同門井節夫に委任し、その費用および報酬として第一審判決言渡日に二〇〇、〇〇〇円を支払う旨約したと認められる。しかし、本件審理経過、本件事件の難易、原告の損害額等に鑑みると、右のうち一五〇、〇〇〇円が昭和四六年一一月九日の現価による本件事故と相当因果関係に立つ損害と認めるのが相当である。

四  結論

以上の次第であるから、被告早川、同会社は各自原告に対し本件事故にもとづく損害賠償として一、二八八、七〇〇円およびこれに対する右被告ら宛本訴状送達日の翌日であることが記録上明らかな昭和四六年一一月一〇日から民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払義務があるから、原告の右被告らに対する本件請求は右の限度で認容し、その余をいずれも棄却し、原告の被告公団、同山梨県に対する本件請求はいずれも失当であるから棄却し、訴訟費用の負担について民事訴訟法八九条、九二条、九三条、仮執行の宣言について同法一九六条一項を各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 沖野威 大出晃之 大津千明)

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〈省略〉

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